世界中の多くの国で領土紛争が行われています。
日本においても、北方領土、竹島、尖閣諸島といった具合に近隣諸国と揉めているのが現状です。
そのほとんどが両国が互いにその地域の領有権を主張しているためです。
しかし、世界にはわずかながらではありますが、どの国にも属していない地域があります。
いずれの国家によっても領有権を主張されていない土地を無主地と言います。
今回は、そんな無主地の代表格であるビル・タウィールという地域をご紹介します。
ビル・タウィールはエジプトとスーダンの国境地帯にある地域です。
境界線は全て直線で構成されており、北の境界は北緯22度線であり、面積は2060㎢にも及びます。
かつては遊牧民族アバブダ人が暮らした深い泉という意味の土地ですが、現在は砂漠が広がる不毛地帯です。
たしかに何もない土地ではありますが、どうしてエジプトもスーダンも要らないと言っているのでしょうか?
貰えるものは貰っておけばいいのに。
その答えを語るにあたって、避けては通れない地域がもう一つあります。
名をハラーイブ・トライアングルといい、ビル・タウィールの東北側、紅海に接する22度緯北の地域です。
ズバリ、両国とも、ハラーイブ・トライアングルが自国のもので、ビル・タウィールは相手国のものと主張している状態なのです。
先ほどの画像をご覧いただくとわかると思いますが、ハラーイブ・トライアングルはビル・タウィールの10倍近くの面積を持つ地域です(面積は20,580㎢)
加えて、世界の大動脈と呼ばれるスエズ運河が存在する紅海にも面しています。
交通の要所であることに加え、多くの石油も発見されており、資源的に大変魅力的です。
海上だけでなく、地上においても金鉱が発見され、拠点となる街も2か所存在します。
ビル・タウィールとは比べものにならないくらい、土地の重要度はハラーイブ・トライアングルの方が圧倒的に上です。
問題をややこしくしているのは、ハラーイブ・トライアングルはかつて2ヵ国ともに領有していた時代があるということです。
エジプトは1899年、イギリスがエジプトとスーダンの境界線を北緯22度線と設定した際に。
スーダンは1902年、またもイギリスが新しい行政境界線を引きなおした際に領有していました。
両国が共に領有していた過去から、圧倒的に魅力的なハラーイブ・トライアングルを自国のものと主張し、不毛地帯のビル・タウィールの領有権を否認する形となってしまったのです。
ちなみ、現在ハラーイブ・トライアングルはエジプトが実行支配しています。
また、ビル・タウィールにはエジプトかスーダンを通ってしかアクセスできないため、第三国がビル・タウィールを自国領土宣言することもできません。
この結果、ビル・タウィールは「地球上でも稀有などこの国のものでもない土地」となっているのです。
学習ビル・タウィールから学ぶ地理学のおもしろさ
●世界中に存在する領土問題の多くは、その土地に価値があるため存在している
(例えば、石油などの天然資源、漁業、国防の観点から)
●エジプトやスーダンはかつてイギリスの植民地であった
●いずれの国家によっても領有権を主張されていない土地を無主地と呼ぶ
コメント