世界の国には、一国の中心となる都市である首都が存在します。
日本なら東京、中国なら北京、イギリスならロンドン、アメリカならワシントンD.C.といった具合に、その国の中央政府が所在し、国の最高指導者が拠点とする都市のことを指す場合が多いです。
そんな中、首都が存在しない国が世の中には存在します。
都市国家はどうなのか?
ちなみにシンガポールやモナコといった都市国家の扱いはどうかというと、これらの国はもともと首都であるシンガポール市やモナコ市がそのまま国になったので、「首都しか存在しない国」とも言えます。
ただし、バチカン市国だけは扱いが難しく、ローマ市の一部の範囲をバチカンとしており、「バチカン市」が存在するわけではありません。
そのため、都市国家という扱いは微妙で、首都は存在しないというのが正確かもしれません。
今回取り上げさせてもらう国は 太平洋に浮かぶ島国ナウル共和国です。
オーストラリアとハワイの間に位置し、世界で3番目に小さな国です。
全面積21㎢という極小っぷりで、人口は約1万人しかいません。
ナウル共和国の首都は通例、政府機関が位置するヤレンであるとされています。
しかし、ナウルには都市と呼べるものは存在せずに、ヤレンも「地区」に過ぎません。
ナウル政府も公式に自国の首都の存在を公認していません。
このナウルという国は、かなり波乱万丈な国でなかなか興味深い歴史を持っています。
この国は、かつて地上の楽園と呼ばれ、世界最高水準の生活を享受しました。
島全体がリン鉱石でできており、1968年の独立以降その採掘により国はうるおいました。
医療費、教育費、水道・光熱費、税金全てタダという贅沢っぷりです。
加えて、リン鉱石の採掘は全て外国人労働者に任せっきりで、国民は全く働く必要がなくなりました。
その結果、国民の9割が無職という夢の時代が30年ほど続きました。
その間国民は毎日食っちゃ寝の生活が当たり前となり、国民の90%が肥満。30%が糖尿病という世界一の肥満&糖尿病大国になりました。
しかし、そんな時代はいつまでも続くわけではありません。
1990年代末、いよいよリン鉱石は枯渇し、国の財政は破綻状態へ至りました。
それにもかかわらず、長年働くことを忘れてしまった国民は動くことをしません。
21世紀に入り、堕落しきったこの国はさらなる負のスパイラルへ加速していきます。
苦し紛れのマネーロンダリング支援やパスポートの不正発行がテロ組織に活用されるなど、国際的に批判されるようになりました。
財政支援を見返りにオーストラリアから難民を引き受けたり、国連での1票をちらつかせて台湾から財政支援を受けたり、とにかく動かず楽して稼ぐ性根が離れません。
2015年にはオーストラリアに次ぐ支援国であるニュージーランドが、人権問題などを背景に援助を停止すると発表し、国の経済はますます悪化しています。
己を見直し、いままでと異なる戦略で発展して行く必要があります。
学習ナウルから学ぶ地理学のおもしろさ
●ナウルはかつてリン鉱石の一大産地で、世界最高水準の生活を送っていた
●「資源には限りがあり、枯渇する」という事実をナウルが反面教師として世界に知らせてくれた。サウジアラビアの王族がわざわざ日本へやってくるのは、原油国の置かれた立場がナウルと重なるからである。金満体制はいつまでも続かない。原油の輸出に偏った貿易構造からの脱却を早くから模索している。
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