日本は世界一の長寿国と言われています。
厚生労働省の最新調査によれば平均寿命は「男性80.50歳」「女性86.83歳」となっています。
近年は医療技術の発達により人間の寿命は大幅に伸びておりますが、その一方で、世界には未だに寿命が50歳程度の国があります。
今回は世界一平均寿命の短い国を紹介したいと思います。
早速ランキングを見ていきたいと思います。
順位 | 国名 | 平均寿命(低い順) |
1 | 中央アフリカ | 52.8歳 |
2 | レソト | 53.7歳 |
3 | チャド | 53.9歳 |
4 | シエラレオネ | 54.3歳 |
5 | ナイジェリア | 54.3歳 |
6 | ソマリア | 57.0歳 |
7 | コートジボワール | 57.4歳 |
8 | 南スーダン | 57.6歳 |
9 | ギニアビサウ | 58.0歳 |
10 | 赤道ギニア | 58.4歳 |
ということで、世界一平均寿命の短い国は中央アフリカでした。
中央アフリカに限らず、トップ10にランクインしたすべての国が案の定アフリカの国です。
これらの国々は世界最貧国と呼ばれ、今も非常に厳しい環境下に置かれています。
2014年以降中央アフリカが世界一平均寿命の短い国として扱われていますが
それ以前この不名誉なランキングに君臨していたのはシエラレオネという国です。
シエラレオネも中央アフリカも置かれている環境は似たような状況にあります。
今でこそ世界の平均寿命は最低でも50歳を超えていますが、20年前シエラレオネの平均寿命は35歳とかなり衝撃的な数値で話題となっていました。
あまりに日本の寿命からかけ離れていて想像できませんよね。
シエラレオネも中央アフリカもその背景にあるのは、世界トップクラスの劣悪な医療環境です。
これらの国々の看護師の数は人口1万人に対してたった2人しかいません。
一方、日本は人口1000人に対して7.8人もついています。
これも世界最多ではありませんが、世界的にかなり恵まれている環境なのは間違いありません。
マラリアやエイズ有病率が最も高いアフリカ中部で医療環境が整っていないため、出生時に母親が死亡する確率が非常に高く、新生児や乳幼児も早くに命を落としてしまう危険にあります。
また、インフラも整っておらず不衛生な住環境に晒されています。教育体制も当然整っていないので、国民の衛生観念は非常に低く、まさに負のスパイラルに陥っています。
アフリカの多くの国がこのような厳しい条件下にあるのですが、シエラレオネと中央アフリカはこれらの劣悪な環境に加えてさらに致命的な不運が重なりました。
シエラレオネは、平均寿命35歳という最悪の時期(1990年代)激しい内戦状態にありました。
ダイヤモンド鉱山の利権を巡る政府と反政府軍の戦いが10年に渡り続き、約7万5千人もの死者を出してしまいました。
内戦に多くの子供が誘拐されて強制的に兵士として利用されたりもしていました。
非常に残虐な行為が一般市民に対しても行われ、血で血を洗う過酷な結果となりました。
内戦が落ちつき、国が立ち直ろうと進みだした2010年以降、今度はエボラ出血熱が大量に発生しました。
東部で発生したエボラは、西へと拡大し、首都フリータウンで爆発的な感染に至りました。
フリータウンは人口約100万人の大都市です。
街が非常に過密状態であることに加え、社会的・文化的背景が全く異なる一族がたくさん集まる多民族社会であることが追い打ちをかけました。
というのも、国内のほとんどの地域が単一民族社会であるシエラレオネにおいて、(教育が全く行き届いてない)異なる民族へエボラ対策をして回ることは非常に困難で、襲い掛かる疫病に立ち向かう術はありませんでした。
その当時の勢いは驚異的で、1時間に5人のペースで増加していきました。
その後、世界各国から支援活動が行われ、2015年頃には収束したようです。
現在、世界一平均寿命の短い国である中央アフリカでは一体何が起こっているのでしょう。
現在、中央アフリカは無政府状態が続いています。
2013年に内戦が発生し、ムスリムによって結成された民兵組織「セレカ」とキリスト教徒を中心とする民兵組織「アンチ・バラカ」が衝突を繰り返していきました。
その結果、首都バンギ以外の国土の3分の2は武力勢力により支配されてしました。
この内戦、非常に厄介な点が2つあります。
第1に武装勢力同士の戦闘が大変少ないことです。
どういうことかというと、彼らは互いに直接やりあわず、あえて相手側の一般市民ばかりを襲っているのです。
町は次々と襲われ、子供たちは学校に行くこともできなくなりました。
第2に国連やNGOから派遣される人道支援従事者を積極的に襲っているということです。
これは中央アフリカならでは特殊な状況で、多くの後進国でも人道支援従事者が襲われることはここまで多くはありません。
世界でおきてる人道支援従事者に対するすべての攻撃の3分の1を占めるほどとも言われています。
無関係な一般市民ばかりを襲い、それを支援しようとする者までも襲うこの国に手を差し伸べようとする人々はほんのわずかしかいません。
そして、この国が最も不運なのは「世界から無視される」状態にあるということです。
この最大の理由は、中央アフリカ内戦が大国に及ぼす影響が小さいからです。
例えば、イスラエルは世界一難民の多い国で、世界的に支援・注目されています。
イスラエル対イランの争いは実際には、アメリカ対ロシアの代理戦争であり、パワーゲームが行われています。
なぜこんなことが行われているかというと、そこに何かしらの利益・不利益があるからです。
しかし、中央アフリカの場合はどうでしょう?
介入しても得がなく・放置しても損がないこの国の内戦に世界は積極的になれません。
これに加え、無関係な一般市民と支援者を襲う武装勢力の特殊性もあいまって、この国は「世界で最も無視される危機」のワースト1に選ばれました。
学習シエラレオネ・中央アフリカから見る地理学のおもしろさ
●アフリカの国々は他の地域と比べて、経済発展が遅れている
なかでも最貧国と呼ばれる国は平均寿命も短く、非常に危険な住環境に晒されている
●シエラレオネを中心にギニア湾岸諸国は2014年にエボラ出血に苦しめられた
●中央アフリカなどアフリカ中部エリアはエイズ有病率が非常に高い
●西サハラの多くの国はかつてフランスの植民地であった(旧宗主国)
●アフリカの紛争がなかなか収まらないのは、大国が積極的に関与してこないから
その理由は、介入しても利益がなく、放置しても不利益がないため
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