前回は世界一チョコレートを好きな国を見ていきました。
今回はそのチョコレートの原料となるカカオ豆にスポットライトを当てていきます。
カカオ豆は「神様の食べ物(テオブロマ・カカオ)」という学名をもち、古代メキシコで栽培が始まりました。
当時は神への供物と扱われたり、貨幣としても用いられていました。
そのカカオ豆をコロンブスがヨーロッパへ持ち帰り、砂糖・香辛料を加えてチョコレートとして上流階級に歓迎されるようになりました。
その後、ヨーロッパ人の手で19世紀に西アフリカで栽培されるようになった歴史があります。
そんなカカオの生産量ランキングを早速見ていきましょう。
順位 | 国名 | 生産量(トン) |
1 | コートジボワール | 196万 |
2 | ガーナ | 94万 |
3 | インドネシア | 59万 |
4 | ナイジェリア | 33万 |
5 | カメルーン | 30万 |
6 | ブラジル | 23万 |
7 | エクアドル | 23万 |
8 | ペルー | 13万 |
9 | ドミニカ共和国 | 8万 |
10 | コロンビア | 5万 |
ご存知の方も多いかと思いますが、カカオ生産量世界一の国はコートジボワールで、世界の生産量の3分の1を占めます。
日本のチョコレート商品でもお馴染みのガーナは世界第2位です。
地域的にはやはり西アフリカと中南米で多く生産されていますが、やはりコートジボワールが圧倒的ですね。
カカオは赤道から南北緯20度以内の範囲で、年間平均気温が27度で16度を下回ることなく、年間降水量が1000ミリメートルの場所でしか栽培できません。
加えて、水はけのよい土壌、強風に煽られないなど厳しい条件が追加されます。
このエリアをカカオベルトと呼ばれて、アフリカは世界の生産量の約70%を占めています。
チョコレートの消費量は年々増えていく一方、カカオの生産量は簡単には増やせません。
カカオ豆の生産は非常に難しく、プランテーションに向かない作物です。
西アフリカのカカオ生産地域では、家族単位の小規模農家がほとんどです。
コートジボワールは、アフリカ西部に位置する国で象牙海岸とも呼ばれています。
佐賀県とほぼ同じ経済規模で世界的にはまだまだ貧しい国です。
一方、「西アフリカの優等生」とも呼ばれ、他のアフリカ諸国と比較すると決して低くない水準ではあります。
このカカオ豆の栽培と切っても切り離せないのが、児童労働問題です。
小規模農家は労働者を雇うこともできず、子どもたちは教育も受けられずに苛酷な労働環境で奴隷のような状態で働かされています。
周辺国のマリやブルキナファソから誘拐されたり、人身売買された子どもたちも多いようです。
現在、この児童労働をなくすために「フェアトレード」という取り組みが世界中で行われています。
しかし、コートジボワールのフェアトレードチョコは現在も世界中で見かけません。
コートジボワールではまだまだこの問題は進む気配を見せていないのです。
この理由は実は、日本のカカオ豆輸入先からも探ることができます。
日本へのカカオ豆輸入量の約71%はガーナ産で、残りはエクアドルやベネズエラなどの国から輸入されています。
世界で圧倒的な生産量誇るコートジボワールのカカオ豆は日本ではほとんど輸入されていないのです。
この理由は、カカオ産業が国営管理されているか民営管理さているかの違いによります。
ガーナは国を挙げて品質・生産・流通を総合的に管理しています。
対して、コートジボワールは民営で各々が管理しているため、品質にばらつきがあるようです。
フェアトレードへの取り組みもここで違いがでます。
国として取り組むにももなかな難しいフェアトレードを、まとまりのない民営でできるわけがありません。
(といってもガーナも児童労働問題はまだまだ根深く、日本の製菓企業もそれを支援しています)
このため、日本は品質の良く、一元管理できるガーナから仕入れているのです。
依然としてカカオ豆の栽培自体が零細農家の手により行われているため、生産農家への見返りはチョコレート産業全体の中で6%と非常に少ない状態です。
いずれにしろ、カカオ豆産業を儲かる産業にしっかり仕向けれるように世界中で取り組んでいく必要があります。
学習コートジボワールから見る地理学のおもしろさ
●西アフリカのギニア湾諸国では、南西モンスーンの影響で雨が多く、プランテーション農業発達している
●コートジボワールは旧フランス領で世界最大のカカオの生産国
●ガーナは旧イギリス領で世界第二のカカオ生産国(日本のカカオ輸入の大部分を占める)
●貧困のない公正な社会を作るために、途上国の経済的社会的に弱い立場にある生産者と経済的社会的に強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で行う貿易をフェアトレードという。
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