今回は世界でただひとつ2つの国に統治される首都をご紹介したいと思います。
それは、地中海の東端に浮かぶキプロス島です。
四国の半分ほどの小さなこの島にキプロス共和国と北キプロス・トルコ共和国があります。
キプロスは聞いたことあるけど、北キプロスなんて聞いたことないという人も多いかと思います。
それもそのはず、この国を国家として承認しているのは世界で唯一トルコだけで、一般的に国として認められていません。
この2ヵ国が共に首都をニコシアという都市にしているのです。
キプロス島にはギリシア系住民が80%、トルコ系住民が20%暮らしています。
そんなキプロス島はかつてイギリスの西アジア支配の拠点とされていました。
大部分のギリシア系住民が第二次世界大戦後ギリシアへの統合を主張し、イギリスと対立しました。
後にイギリスは統合ではなく独立を認め、1960年にキプロス共和国として独立しました。
(この際、イギリスは独立を認める代わりに軍事基地として島の南部2か所のアクロティリとデケリアを確保しました。そのため、小さな島の中にイギリスの海外領土が2か所あります)
キプロス共和国として独立後、すぐに残りの20%であるトルコ系住民が反発を起こしました。
紛争中の74年にギリシアがキプロスに軍事的に介入をしてきます。
それに対してトルコが反発し軍を出兵し、北キプロスを占領し一方的に独立宣言を放ったのです。
実効支配が続いた後、2004年にキプロス再統一の国民投票が行われたのですが、決裂しました。
現在軍事衝突は起こっておらず、国連の仲介で話し合いが断続的に行われています。
分断された首都にはグリーンライン(停戦ライン)が引かれたまま、現在に至ります。
では実際、グリーンラインを引かれた首都ニコシアはどのような状態なのでしょう。
2004年までは、南側のキプロス共和国からに限り北側への通行が可能でしたが、北キプロスからは通行ができませんでした。
現在はクロスポイントでパスポートを見せれば、南北どちらからでも簡単に移動できるまでになりました。
ギリシア側の街並みが華やかなのに対し、トルコ側は少しさびれた村外れのような雰囲気を醸し出しています。
当然ですが、使われる言語や通貨、宗教、文化習慣も異なるため、一つの首都で異なる2ヵ国の雰囲気を感じることができます。
そんなニコシアの街並みはヴェネツィア共和国に統治されていた時代の中世の雰囲気を体験できる街並みが観光スポットとなっています。
学習キプロスから学ぶ地理学のおもしろさ
●キプロスは地中海東部に浮かぶ島国である
●南部をギリシア系のキプロス共和国、北部をトルコ系の北キプロス・トルコ共和国と別れている
●キプロス共和国はEUにも加盟している
●キプロス共和国にはイギリスの海外領土がある
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