前回、最南端の都市をご紹介いたしました。今回は、最北の町をご紹介します。
候補がたくさんあった最南と比べ、最北は1つだけで迷うことがありません。
ノルウェー領のスヴァールバル諸島に位置するロングイェールビーンです。
スヴァルバール諸島最大の島であるスピッツベルゲン島は唯一の有人島で面積は37,673 km2と九州と同じくらいの大きさです。
(ちなみにスピッツのファンクラブであるスピッツベルゲンもここから来ています)
ロングイェールビーンは同島最大の町で、北緯78.2132度と非常に高緯度に位置します。
北極点からはわずか1000km程しか離れていません。
人口は約2,000人と、「1000人以上が居住する町」としては世界最北です。
スヴァールバル諸島は国際法上はノルウェー領になっていますが、直接統治は受けていません。
スヴァールバル条約加盟国の国民は等しくこの島で経済活動を行うことができます。
この条約に日本も加盟しており、日本人居住者も数名います。
ロングイェールビーンは、北緯約80度に位置するため、一年のほとんどが白夜か極夜となります。
道路は整備されておらず、公共交通機関もないので主な移動手段はスノーモービルになります。
スヴァールバル諸島の人口が約2462人対して、スノーモービルの登録台数は4000台以上と、人よりも多くあります。
もう一つ人より多いのが、ホッキョクグマで約3000頭います。
ホッキョクグマ対策として、街を出る際には銃の携帯が義務付けられています。
スヴァールバル諸島には変わったルールが存在します。
それは「死んではいけない」ということです。
「死ぬことは違法」なんて大袈裟に書いてる記事もありますが、実際は違います。
正確には「この島で土葬することができない」のです。
この理由は、スヴァールバル諸島の極寒の気候に関係しています。
この島では土葬しても遺体が腐敗しにくいことから感染症などのウィルスが残り続け、再感染の危機になると考えたからです。
そのため、死後ノルウェー本土にて火葬された後にスヴァールバル諸島で埋葬されます。
ロングイェールビーンはかつて炭鉱の町でしたが、現在は観光・研究分野に重点を置いています。
観光分野ではスノーモービルや犬ぞりを楽しんだり、フィヨルドクルーズができるため、多くはないですがコアな観光客が訪れます。
ちなみにロングイェールビーンには世界最北のお寿司屋やラーメン屋もあるようです。
研究分野では「世界種子貯蔵庫」という大変珍しい種子銀行があります。
ここでは、全世界約880万種以上の種子サンプルを貯蔵しており、
今後さまざまに予想される気候変動や災害などによる農作物種の絶滅を防ぎ、
世界各地での地域絶滅があった際に栽培機会を提供することを目的としています。
地球上で一般人が暮らす最北の定住地はロングイェールビーンより北にあるニーオーレスンです。
人口は35人ほどで、町は法人化されていません。
スヴァールバル諸島で法人化された町はロングイェールビーンのみです。
そのため、最北の町がロングイェールビーンで間違いはありません。
ここは、かつては炭鉱町でしたが、今では極地化学の国際拠点となっています。
オゾン層破壊や大気などの環境分野に関する研究が進められており、日本もここに国立極地研究所を設けています。
研究のための集落のため、冬季は人口35人の町が、夏季には180人まで増えるようです。
学習世界最北の町”ロングイェールビーン”から学ぶ地理学
●スヴァールバル諸島はノルウェー領
●ロングイェールビーンは北緯80度近くに位置するため、北極圏にある
緯度66度33分より高緯度のエリアを極圏といい、白夜と極夜が発生する
白夜・・・夏に1日中太陽が沈まない
極夜・・・冬に1日中太陽が昇らない
北極圏ではオーロラを見ることもできる
●ケッペンの気候区分では、寒帯(E)のツンドラ気候である
ツンドラ気候(ET)・・・最暖月の平均気温が10℃未満0℃以上、主に北極海沿岸に分布
●スヴァールバル諸島を含む高緯度の島は、メルカトル図法で見ると非常に大きく見えるが実際は九州くらいの大きさである
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