【解説】「金華サバ」と「金華ハム」から学ぶ地理学

食べ物と地理学

近年、第三次サバブームなるものが到来しています。コロナ禍で料理の頻度が上がり、「サバ缶」や「塩サバ」などをテレビで見る頻度も極端に増えました。そこでよく聞くようになったのが「金華サバ」です。金華サバは三陸海岸の石巻港でとれる『まさば』のことを指します。

一方、お歳暮などで見かける高級ハムの代名詞「金華ハム」。こちらは中国産の金華豚という豚肉で作られた中華ハムのことを指します。両者は『高級品』という意味では共通していますが、全く関係はありません。今回は、全く異なる2つのブランド食材を地理学的視点も交えながら、詳しく紹介していきたいと思います。

金華サバ

金華サバは、宮城県石巻市の金華山沖で漁獲され、石巻港で水揚げされた旬の大型のマサバのことを指します。2010年にブランド化されたばかりの比較的新しいブランドサバであるにも関わらず、その知名度は抜群です。

金華サバと名乗るためには「南三陸金華山周辺海域で定置網、一本釣、巻き網によって漁獲されて石巻港で水揚げされた高鮮度で脂のり抜群の大型マサバ」という厳しい条件をクリアする必要があります。石巻港以外で水揚げされたサバは、同じマサバでもブランドを名乗れないため、非常に希少価値が高いのです。

条件具体的数値
水揚げ漁港石巻港
根つき金華山周囲
大きさ500g以上
脂肪率15%以上
旬の時期9-1月
金華鯖と認められる条件一覧

宮城県石巻市の沖には「金華山」という島があります。金華山沖は親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかる潮目であることに加え、三陸海岸に連なるリアス式海岸点在する多く島々魚の絶好の住処となるため、非常に豊富な種類の魚介類が水揚げされています。石巻(三陸海岸金華山沖漁場)は、世界的にも豊富な水産資源が集まることから『世界三大漁場』の1つに選定されています。

世界三大漁場とは?

世界に多数存在する漁場の中でも特に漁獲量の多い優良な漁場として定義された3漁場。その全てが大陸棚や寒流と暖流が出会う潮目である

漁場寒流暖流
ノルウェー沖東グリーンランド海流北大西洋海流
カナダ ニューファンドランド沖
(グランドバンク)
ラブラドル海流メキシコ湾流
日本 三陸・金華山沖千島海流(親潮)日本海流(黒島)

リアス式海岸で覚えておくべき3つの要点

①海の水位が上がり、山や丘が海に沈んだことで谷に海水が入り込んでできた入り組んだ海岸のことを指す。

②複雑に入り組んだノコギリ状の海岸線のため、一年を通して波が穏やで養殖業が盛ん

海岸名養殖物
三陸海岸わかめ/こんぶ/カキ
志摩半島真珠
宇和島沿岸真珠/たい/はまち

津波の被害が大きくなりやすい。広い海から狭い入り江に津波が押しせることで水位が高くなるためである。

では、通常のマサバに比べてどれくらい違うかというと、金華山サバの特徴は以下の通りです。

  • 通常の真鯖よりもサイズが大きい
  • 脂と身の旨味が強いにもかかわらず、後味がすっきり
  • 臭さのない旨味だけが口に残る
  • 醤油をはじくほど脂の含有量が多い

その希少性と人気から一般的なサバよりも高値で取引されており、関東方面では高いとき1キロあたり1~2万円で取引されています。近年は漁獲量が減っていることから『幻のサバ』と呼ばれるまでになっています。

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日本の漁港と主に水揚げされる魚の傾向

漁港特徴
釧路(北海道)かつては遠洋漁業の中心。いわし・たら・さんま
八戸(青森)三陸海岸北部。潮目あり。いわし・さば・いか
石巻・気仙沼(宮城)三陸海岸南部。震災地。さば・いわし・さけ
銚子(千葉)日本一の水揚げ量。さば・いわし・まぐろ
焼津(静岡)遠洋漁業の基地。第二位の水揚げ量。かつお・まぐろ
境(鳥取)日本海側の水揚げ量日本一。さば・いわし・あじ

寒流魚-さけ・ます・にしん・たら・さんま

暖流魚-まぐろ・かつお・あじ・さば・いわし

金華ハム

お中元やお歳暮などのギフトに人気のハムには、様々な種類があります。金華ハムは中国の浙江省の金華地区で生産されているハムのことを指し、中国語では金華火腿と表現されます。金華ハムはしっかりと効いた塩味と、その歯ごたえのある肉質が世界的に評価されおり、『世界三大生ハム』の一つに数えられます。

世界三大生ハム

国名名前特徴
イタリアプロショット・ディ・パルマ控えめな塩気とまろやかな味わい
スペインハモン・セラーノ強めの塩気と独特の風味
中国金華ハムしっかりと効いた塩味と、歯ごたえのある肉質

浙江(せっこう)省は、長江デルタ経済圏の一翼を担っており、東は東シナ海、南は福建省、北は上海市・江蘇省と隣接しています。省都は杭州(こうしゅう)市で、アリババグループの本社もここにあります。恵まれた立地条件から、沿岸部を中心に都市が発展しており、富裕層の多い地域となります。

金華市は浙江省のちょうど真ん中に位置し、古くから豚だけでなく鶏や鴨も盛んに飼育されてきました。金華ハムの元となる金華豚は、ハムを作る為だけに特別に育てられた小柄な豚で、その歴史は900年にも及びます。頭と臀部(でんぶ)が黒色である特徴を持っています。茶殻や白菜を発酵させた餌で育てられ、6ヶ月ほど飼育された豚の後ろ足腿肉のみが金華ハムに用いられます。

名称を公益財団法人日本食肉消費総合センターhpより http://www.jmi.or.jp/info/word/ka/ka_087.html

金華ハムは、塩漬けして表面にラードを塗り、乾燥させて長期間熟成させられます。肉が硬めで塩気が強いので、酒蒸しや炒め物にスープの出汁などによく利用されます。そのため、スープを大切にする広東料理に重宝される食材です。

中国四大料理

種類特徴背景具体例
四川料理痺れるような辛い味冬の寒さを乗り越えるため麻婆豆腐
青椒肉絲
担々麵
北京料理味が濃く脂っこい宮廷料理のため北京ダック
ジャージャー麺
上海料理コクのある甘い味魚介類が豊富で黒酢をよく使用するため上海ガニ
小籠包
広東料理素材を活かした淡白な味健康を重視した漢方料理色が強いためワンタン麺
牛肉のオイスターソース炒め
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中国の豚の生産量

現在世界の食肉生産量は、牛肉が6000万トン、豚肉9600万トン、鶏肉1億トンで、中国は牛肉では世界第3位、豚肉と鶏肉は世界第1位の生産量を誇ります。豚肉に至っては、世界の生産量の約半分を中国が占めております

中国では古くから豚(イノシシ)の飼育が盛んで、食肉=豚肉でした。国内消費量の実に65%が豚肉です。驚くべきは、圧倒的な生産量でも国内の需要を満たせておらず、中国は「世界一の豚肉輸入大国」でもあるのです(ちなみに2位は日本)。

順位国名生産量(トン)
1中国42,553,071
2米国12,542,660
3ドイツ5,232,000
4スペイン4,641,160
5ブラジル4,125,728
世界の豚肉生産量(2020)

まとめ

宮城県産の「金華サバ」と中国産の「金華ハム」を地理的要素も踏まえがら紹介してきました。(ブランド)食材が生まれる背景には地理的条件・要素がこれでもかというくらい込められています。身近なものから関連付けて覚えていくのが、地理に限らず勉強のコツです。最も密接した”食べ物”から攻めてみるのは効果的だと思うので、これを機によければ色々調べてみてください。

ちなみに「金華サバ生ハム」と呼ばれる商品も存在しており、非常に美味しそうですが、ネーミングは完全に乗っかってる気がしますね(笑)


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