【世界一大きい死者の街】

世界一・日本一

世界で深刻化する"お墓問題”

新型コロナウィルス感染の拡大によって、2020年以降死者の数は世界的に増しています。

死者が増えれるほど、お墓に関する問題も併せて深刻化しています。

例えば、(現在1日約4000人がコロナウィルスによって死亡している)インドでは、連日ガンジス川に何百という死体が川面を漂い、腐敗した遺体が多くの河畔で確認されています。

火葬場や墓地に空きがなく、火葬に必要な薪も足りずに、そのままガンジス川に沈められているようです。

ガンジス川と火葬 SimonによるPixabayからの画像

こうした事態は決して他人事ではなく、現在日本でもとある「お墓問題」でニュースをよく見るようになりました。

それは、ムスリム(イスラム教徒)のためのお墓に関するトラブルです。

日本は世界一の火葬大国であり、その割は実に99.9%にも及びます。それに対して、ムスリムは土葬を原則としています。

日本国内に土葬ができる墓地は7か所しかなく、新規で拡大しようにも、生活用水の汚染、農業の風業被害、コロナ感染のリスクなどにより近隣住民の反発は必至でなかなか受け入れてもらうことはできません。

また、土葬となると多くの土地が必要となります。広く、深く掘れる場所を必要とするため、非常にハードルが高いのです。

ムスリムの人々にとっての死生観は、我々日本人の比にならないくらいにこだわりと想いが強く、この問題は”できない”ではなかなか受け入れ難い事実のようです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介する”世界一の死者の街”とは、”世界一大きい墓地”を指します。そして、それはイスラム教の国 イラクにあります。

Wikipediaより使用

世界一大きい墓地 ワディ・アル・サラーム

世界一大きい墓地は、イラク中南部に位置するナジャフという都市にあります。

この街はイスラム教のシーア派の人々にとっては、メッカやメディナ、エルサレムに並ぶ聖地とされています。

ワディ・アル・サラーム世界最大の墓地であり、その面積は約6㎢を越え、都市全体の約13%が墓地にあたります。

都市の人口は約140万人を超え、国内第5の規模を誇ります。しかし、その比にならないくらい埋没されている死者の数は多く、数百万~数千万人に及ぶと言われています。

ワディ・アル・サラームは「平和の谷」とも呼ばれており、お墓の数も500万以上に及びます。

「真っ当に暮らし来た人間は、この地で眠ることで天国へ行ける」とシーア派の人々は考信じています。

この地には、多くの預言者や王たちも同様に埋葬されています。特に、シーア派にとっては特別な存在である、イスラム教第4カリフのイマーム・アリーが埋葬されています。(シーア派にとっては、1~3代の指導者は正当な後継者(カリフ)とは考えておらず、第4代のイマーム・アリーのみをムハンマドの唯一の正当後継者と捉えています)

埋葬の歴史は1400年に及ぶそうです。

シーアの人々にとってこの街はかけがえのない聖地であり、毎年、何百万人の人がこの地を巡礼しています。

加えて、国内外のシーア派の人間の遺体もわざわざこの地に埋めてほしいと運ばれてきます。そのため、遺体交通ビジネスという奇妙な産業が成り立っています。

世界一の死者の街 コロナの影響

イラクは新型コロナウィルスの蔓延が中東でも特に酷い国です。

現在に至るまで、約128万人が感染しており、死者は1万6800人まで達しています。

加えて、度重なる戦争や紛争でくたびれた医療体制が、逼迫する状況についてこれずにいます。

また悪化に拍車をかけているもう一つの大きな原因は、お隣のイランの惨状です。

シーア派の総本山ともいえるイランは、中東ではずば抜けた感染者・死者数を叩き出しています(感染者は308万人、死者は8万2700人)。

同じくシーア派が多数を占めるイラクとは、学問、ビジネス、聖地巡礼など常に人の行き来で溢れており、このことがコロナ感染を爆発に拡大させてしまう結果となってしまいました。

シーア派の聖地であり、遺体が世界中から集まるナジャフはどうなってしまったのでしょう?

イラクでは、新型コロナウィルス感染症による死者の埋葬に関して、当初遺体からの感染リスクがあるとして、何か月間、従来の墓地への埋葬を禁止していました

その代わりに、ナジャフ郊外の砂漠に「新型コロナウィルス墓地」を設置し、防護服を身に着けたボランティアが遺体を数メートル間隔で慎重に埋葬していました。

家族は埋葬にろくに参加もできず、また、異なる宗派・宗教の死者が皆ここに埋葬されました。

「死生観」を大切にするシーア派の人々にとって、死者へのこの扱いは、理解はしていても受け入れることができるものではありませんでした。

昨年9月にWHOが「遺体を取り扱う際に感染する可能性は低い」と発表した際に、イラクではすぐに、コロナ感染症で亡くなった人の遺体を家族が希望した墓地に改葬することを許可すると発表しました。

多くの遺族が、砂漠にかけつけワディ・アル・サラームへ遺体を運ぶために、砂漠を掘り返す場面が各所で見られました。

改葬自体は禁止されているわけではないが、再び掘り返すことを道義的に良く思わないナジャフの聖職者と、それでも死者を弔いたい一心で伝統的な埋葬にこだわる住民。死者の街は、異様な光景に包まれています。

学習世界一大きい墓地から学ぶ地理学のおもしろさ

●混合しがちだが、イランとイラクは全く異なる国である

 イラン ペルシア人 ペルシア語 シーア派が9割

 イラク アラビア人 アラビア語 シーア派6割、スンナ派3割 

●イラクはチィグリス=ユーフラテス川が流れ、メソポタミア文明発祥地

 世界遺産でもある古代遺跡バビロンがあるのもイラク

●両国共に石油資源が豊富だが、度重なる戦争と紛争が続いている

●イスラム教の三大聖地は、メッカ、メディナ、エルサレム

 シーア派にとっては、ナジャフも加わる

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