刃物は今や当たり前のように世界中で製造・販売されています。日本でも岐阜県関市や大阪府堺市、新潟県三条市などが有名ですね。かつては刀を、現在は包丁・ナイフ・ハサミなどと、姿・形・用途は変わりながらも刃物産業は今日まで栄えてきました。
今回は、そんな刃物産業における世界的聖地を3つご紹介していきたいと思います。
イングランド シェフィールド
シェフィールドは、イギリス中部に位置する工業都市です。自然豊かな街で、鉄鉱石・石炭が産出したことにより鉄鋼業で発展した街です。
産業革命の中心地でもあり、ステンレス発祥の地でもあります。そのため、ステンレス製品、特にナイフやフォークなどがよく知られ、特にブレードがハンドルに収納できる「フォールディングナイフ」が有名です。日常生活で使用するのに最適なナイフが人気で、19世紀には生産された刃物の80%以上は輸出さるほどでした。
その他にも、ハンドメイドで伝統的な高級ハサミや外科用のメスを中心に医療用刃物なども有名です。
シェフィールドは刃物産業の先駆者として、常に絶対的な地位を築いていました。しかし、20世紀に入ると産地間競争は激化し、シェフィールドは徐々に衰退の一途を辿ります。刃物工場は多く閉鎖され、最大手メーカーなどが破綻するなど苦境に立たされています。
ドイツ ゾーリンゲン
世界で一番有名な刃物の街であるゾーリンゲンは、ドイツ中西部に位置します。
ライン川の支流プッパー川の水力、豊富な森林、そして隣接地で産出される鉄鉱石などに恵まれていたことから、13世紀より刀剣の生産が行われてきました。17世紀にはいるとゾーリンゲンは、シェフィールドと並ぶ世界の2大巨頭として名を馳せました。
現在ゾーリンゲンには1000を超える刃物メーカーが存在します。ナイフやハサミ、あらゆる刃物が作られている街ですが、特に剃刀が有名でした。
今は安価な使い捨てタイプのT字剃刀が主流ですが、当時はスチール製のシェーバーしかなく、ゾーリンゲン産のシェーバーは日本でも多くの方が使用していました。19世紀半ばからゾーリンゲンの刃物産業は機械化が進められ、大量生産で高品質、そして、ユーザーの細かい要望にも頻繁に対応しました。
機械化の一方、手工業マイスターなどの制度を作ることで刃物職人の教育制度も整え、世界的に衰退する刃物産業をしっかり維持しています。その結果、シェフィールドとの競争に打ち勝ち、世界一の刃物の街としてのしあがりました。
日本 関市
最後は日本を代表する刃物の産地、岐阜県の関市です。
産地としての歴史は他2つにも負けておらず、今から約780年前の鎌倉時代に誕生しました。元重という刀匠が関市を訪れ、ここで打ち始めたのが発端のようです。飛騨連山の窓口で、炉に使う松炭・肥沃な土壌、長良川と保津川の良質な水という条件が整っている関市に多くの刀匠が集まり、関の名は全国に広まっていきました。
武将がいなくなった現在、その伝統は現在の刀匠にしっかり受け継がれてます。包丁、ナイフ、爪切り、剃刀、はさみなどオールジャンルで知名度を誇ります。特にポケットナイフの出荷額は、日本シェアの50%以上を占めています。
関市が他の国内の産地と比べてとりわけ評価されているのは、安易に低価格路線を追求するのではなく、品質と技術をこれでもかと盛り込んだ高品質路線を打ち出したためです。
関市における刃物生産体制は、メーカーを中心とした分業体制をとっています。刃物を作る工程っで発生するプレス、粗研磨、研削、研磨、刃付け、メッキをそれぞれの職人が行い、金型やプラスチック、木柄もそれぞれのメーカーが製造しております。各分野のプロフェショナルが協力して作り上げた刃物は、非常に付加価値の高い商品として海外市場からも注目されるようになりました。
学習世界三大刃物産地から学ぶ地理学のおもしろさ
●世界三大刃物産地は、イギリスのシェフィールド、ドイツのゾーリンゲン、日本の関である
●刃物産地の条件として、①鉄鉱石・炭鉱、②肥沃な土壌(森林)、③良質な水(河川)が近くに揃っている必要がある
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