『岬』王国、日本。日本の至る所に存在する岬の中でも、東西南北の最突端に位置する岬は特別です。「日本全体の端っこ」は度々名を聞くこともありますが、なかなか訪れることはできません。今回は少しスケールを小さくし、島単位の端っこを見ていきたいと思います。併せて観光情報も載せていますので、ご参照ください。
九州の四端
最北端:太刀浦コンテナターミナル(部崎)
初っ端からヘンテコな場所をご紹介いたしますが、九州本土の最北端は岬でなく、埋立地のコンテナターミナルです。福岡県北九州市にある太刀浦(たちのうら)コンテナターミナルは、日本6大港の1つである「関門港」の門司に位置する西日本最大級の国際物流基地です。そのターミナル業務は遠目から見ても圧巻です。
しかし、ここは「端っこマニア泣かせ」な場所と言えます。というのも、北海道、本州、四国、九州の16端の中で唯一「立ち入り禁止」の場所だからです。ターミナルの入り口付近はフェンスが張り巡らされており、ただ入口を眺めるだけで終わってしまいます。
それではあまりに味気ないので、最寄りの岬である「部崎(へさき)」をご紹介いたします。ここは先ほどご紹介した太刀魚コンテナターミナルから車で10分ほどに位置する“実質九州最北端の岬”です。
瀬戸内海周防灘に面しており、小高い丘には石造りの大きな灯台があります。江戸幕府が兵庫港(神戸港)開港に伴う外国船の安全確保のために設置した灯台の1つです。この灯台は「灯台の父」と呼ばれるR.H.ブラントンによって設計されたもので、国の重要文化財にも指定されています。
灯台と海に向かって建てられた僧侶の石像以外、何もない場所ですが、人も少なく落ち着ける素敵な岬です。太刀魚コンテナターミナル・部崎のいずれにせよ、北九州の北端は関門海峡を越えて門司港ICを降りてすぐの位置にある為、端っこ感を味わうことは難しいかと思います。
ついで旅
九州最北端の地のすぐ近くには、門司港レトロと呼ばれる大正レトロ調にホテルや商業施設を整備した観光スポットがあります。名物の焼きカレーは絶品です。また、関門海峡を徒歩で越えることができる海底トンネル(関門トンネル人道)も近くにあるので、時間に余裕のある方はどうぞ。
最東端:鶴見崎
大分県佐伯市の鶴見半島の先端部にある九州最北端の岬が「鶴見崎(つるみざき)」です。市中心部の佐伯駅から細長く入り組んだ鶴見半島を越えて岬にたどり着くまで車で約1時間(大分市からだと約2時間)と長いですが、訪れる価値は大いにあります。
高さ200mの断崖絶壁の上に立つ岬周辺は、ミュージアムパーク鶴見崎として整備されています。高台にあるパノラマ展望ブリッジからは360度のパノラマが広がり、鶴見崎灯台と豊後水道の絶景を望むことができます。天気の良い日には四国を見ることもできるそうです。
鶴見崎は戦前までカノン砲4門が設置された一般人立ち入り禁止の要塞地帯でした。壊滅的な被害を受けた鶴見崎は時代の証言者です。半島の中間に位置する「丹賀砲台園地」は、そんな日本の戦時中のすさまじさを今に伝えてくれる一方、廃墟と自然の織りなす絶景が素晴らしい隠れスポットなので、併せて訪れることをオススメいたします。
ついで旅
近くで訪れてほしいのが、佐伯市内にある「由布」というごはん屋さんです。大分県は中津からあげや別府のとり天、湯布院の地鶏炭火焼きに代表されるように鳥料理の激戦区です。そんなチキン県で行列の絶えない人気店の名物料理「由布焼」は本当に絶品です。
最南端:佐多岬
北の宗谷岬、南の佐田岬(さたみさき)と言えば、端っこマニアだけでなく、多くの人を魅了する最突端かと思います。鹿児島県大隅半島の南国の海岸線を走り続けた果てにある佐多岬は、日本本土の果てであり、大海原の存在感をひしひしと感じられるスポットです。
ここは他の岬と異なり、大きく観光地化されています。断崖絶壁にあるため、麓には大型駐車場が整備され、そこからバスがピストン運航しています。また、2018年に最新の展望台が整備され、コバルトブルーの海と亜熱帯植物の自然に囲まれた灯台を眺望することができます。展望台への道中には約800mの遊歩道が整備されており、御崎神社も存在します。
佐多岬灯台は「日本最古の灯台」の1つで、大輪島の断崖上に立つため実際には訪れることができません。岬の北約600メートルのところに北緯31度線(ニューデリーやカイロと同緯度)も通過しており、モニュメントが設置されています。
鹿児島駅から車で3時間の長旅ですが、多くの観光客に愛され、またそれに応えれるだけの観光施設が整備された特別な岬と言えます。
ついで旅
佐多岬を擁する南大隅町には近年注目を集める「滝」があります。「雄川の滝」と呼ばれ、幅100メートルほどの断崖から絹のように繊細な滝がエメラルドグリーンの滝壺にいくつも流れ落ちる様は絶大な人気を誇ります。
また、本土最南端の道の駅である「道の駅 根占」は小規模ながらも、抜群の景観(対岸の開聞岳を望める)を誇る展望スポットです。レストランも併設されており、海鮮丼や刺身定食が当然オススメですが、カレーもほっとする味で個人的に押しです。
最西端:神崎鼻
長崎県佐世保市にある「神崎鼻(こうざきばな)」は九州最西端の地です。平成元年に国土地理院による人工衛星の位置測量で正式に認定されました。あくまで「九州”本土”の最西端」であるため、対岸には平戸島が大きく見えています(笑)。果て感は感じにくい場所ですが、なかなか面白い観光スポットです。
神崎鼻は公園として整備されており、最西端の地モニュメントの他に展望台や広場があり、ゆったりと観光することができます。最大の特徴は四極交流広場と呼ばれる大きなタイルのモニュメントです。ここは「日本本土の最西端」でもあるため、かなり力の入った造りとなっています。
また、公園は海抜がほとんどないため、海中遊歩道が整備され、海にも簡単に降りることができます。平戸島によって守られているためか、穏やかに波が押し寄せ、安全に楽しむことができます。ここには灯台はありません。
ついで旅
佐世保市と言えば、佐世保バーガー!勘違いされやすいのですが、ひとつの決まったスタイルのハンバーガーが存在するわけでなく、佐世保市内の店で提供される「手作りで」「注文に応じて作り始める」こだわりのハンバーガーの総称です。そのため、具材も形も店によって全て異なります。
また、佐世保で必ず訪れてほしいのが「九十九島のパノラマ展望」です。市内には数か所展望台が設置されており、国内屈指の多島美を眺めることができます。
おわりに
以上、九州の四端を見てきました。佐多岬と神崎鼻に関しては「日本本土の最突端」でもあるため、端っこ好きにはたまらない場所かと思います。ただ、個人的には「人の少なさ」「果て感」「惹きつける要素」を考慮すると鶴見崎が一番好きでした。
日本は周りを海に囲まれた島国で、全国に岬が存在します。多くの岬はコロナ禍でも人が少なく、落ち着いて観光できるため、良ければ旅行先の1つとして検討してみてください。
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