様々な「乗り物の墓場」をご紹介!【飛行機・船・電車・宇宙機】

世界の変わった国・場所

「〇〇の墓場」という表現をよく聞きます。多くは、引退した乗り物が保管や解体のために待機させられる場所です。今回は、そんな様々な乗り物の”最後となる場所”をご紹介したいと思います。

飛行機の墓場 

海外:アメリカ砂漠地帯

飛行機の耐久年数は約20年と言われています。退役した飛行機はどこに行くのかといとうと、ほとんどがアメリカの砂漠地帯に行きます。その理由は大きく2つ①空気が乾燥しており長期保管が効くため②土地が広いうえに地盤が硬質で道路の舗装する必要がないためです。この2点を満たしているのが、アメリカ合衆国の砂漠地帯で、ここで飛行機の保管または解体が行われています。

その中でも最大級のものに、ディヴィスモンサン空軍基地モハベ空港があります。アリゾナ州にあるディヴィスモンサン空軍基地には退役した戦闘機輸送機などが多く保管されています。カリフォルニア州にあるモハべ空港は引退した旅客機が多く保管されています。

近年はコロナ禍の影響で、航空業界は苦境に立たされています。現在世界の旅客機と貨物機のうち、運航しているのは約60%。ANAやJALも固定費削減のために旅客機を手放す事態となっており、旅客機の解体・リサイクルビジネスは大変な盛り上がりを見せています。とはいえ、需要(部品の買い手)よりも供給(機械の売り手)過多によって部品の価格低下となる恐れもあって混乱に陥っているのも事実です。

世界各地にある「飛行機の墓場」はその圧倒的スケールから、ビジネス面だけでなく、観光スポットという側面も持ちあわせています。モハベ空港は、ロサンゼルスに近いこともあって気軽にレンタカーで訪れることも可能ですし、現地ツアーなども行われています。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:B52sdestroyed.jpg

日本:福島空港

現在、「飛行機の墓場」”旅客機の解体・リサイクルビジネス”が日本にもできるかもしれないという話が浮上しています。

そもそもこれまでなぜ国内に飛行機の墓場がなかったかというと、大きな2つのハードルがあったためです。1つ目は、山がちで狭い国土である日本において大型機を駐車できる広いスペースを持った空港が少ないためです。そして、2つ目制度上のハードルの高さがあります。

というのも、ボーイング社製の航空機から取り外した部品を再利用するには、全てアメリカ連邦航空局による登録が義務付けられています。この登録はアメリカの特定事業者にだけ許されていて、制度として日本の企業には認めれられていません。そのため、解体はできても、部品の再販売ができないため、ビジネスとして成立することができませんでした。

Photo by Tango Tsuttie on Unsplash

そこに風穴を開けようとしているのが、静岡県富士宮市に本社を置く産廃廃棄物リサイクル会社・エコネコルです。政府専用機のボーイング747-400を購入し中古機を海外に販売したことをきっかけに、コロナ禍において飛行機のリサイクル産業に乗り出したのです。

エコネコルはこの制度上の問題を解決し、コロナ禍により疲弊している地方空港に新たなビジネスモデルを見出そうという思いで、現在取り組んでいます。その日本初の「船の墓場」として注目されているのが福島空港です。2009年にJALが撤退し、2011年東日本大震災を機に国際線も運休し、厳しい状況に立たされてます。エコネコルは福島空港とその隣接地を軸に「航空機リサイクルパーク構想」を急ピッチで進めており、早ければ2023年に一部開業を目指しています。

船の墓場 

海外:南アジア

船舶の解体は、20世紀末までは日本で多く行われていました。当時世界有数の造船大国であった日本には、各国の不要になった戦艦などが多数持ち込まれ解体されていました。21世紀になると船舶解体の舞台は、日本・韓国での造船所での解体から新興国・発展途上国遠浅で干満差の大きな砂浜での手作業での解体に変化していきました。

こうした背景には、先進国による処分コスト縮小への思惑があります。苛酷な外洋や自然脅威にも耐えるように設計された船舶は、アスベストや鉛などの有害物質も多数使用されています。こうした船舶を先進国で解体すると、厳しい規制高額な人件費により、解体費がかさんでしまいます。

そのため現在、船舶解体の主戦場は、インド、バングラディシュ、パキスタンといった南アジアの国々となっています。世界中の海洋船舶の4分の3以上がこれらの国々の海岸で解体されています。(世界最大はインドのアラン、次点でバングラディシュのチッタゴン)

船舶の解体現場はいわゆる「3K」(汚い、きつい、危険)に満ち溢れており、貧しい村出身の若者や出稼ぎ労働者が人海戦術で解体を行っています(この3ヶ国は全て人口大国で、世界人口の23%を占める)。世界的にも貧しいバングラディシュでは、1日5USドル以下の給料で命がけの作業を行っています。

一方、船舶解体自体は巨額の利益が上がるビジネスという側面も持っています。チッタゴンでの船舶解体は約5億円の投資で約1億円もの利益が見込めると言われています。加えて、新型コロナウィルスの影響で世界中の豪華客船が多く廃棄処分されるようになり、各国の「船の墓場市場」はかつてない好景気になっています。クルーズ船には船体の材だけでなく良質な調度品や厨房機器なども備えており、通常のコンテナ船や貨物船とは比較にならないほどの利益を得ることができます。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ship_Breaking_by_Gas_Cutting_in_Bhatiary_Yard_01,_Chittagong_Bangladesh.jpg

船舶解体産業はバングラディシュを代表する利益率の良い産業である一方、その恩恵は現場の人々にまで届くことはなく、多くの人々が危険な状態に晒されています。次に目指すのは、労働者の安全性と自然環境を守る解体現場にすることですが、先行きは不透明です。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shipbreaking_Yard_Bhatiari,_Sitakunda.jpg

日本:瀬戸内海

船の墓場は南アジアに変化していきましたが、日本の現在はどうなっているのでしょうか?そもそも、日本はかつては世界シェアの半分を占めるほどに造船業が栄えていました。2000年代以降は、中国・韓国にその地位を奪われ業界第3位にまで落ちてしまいますが、現在もこの3ヶ国で世界の造船量の約92%を占めます。

国内造船の多くは、長崎県瀬戸内海に集中しています。長崎県はリアス式海岸が発達して入り江が深く、波が穏やかであるため大型船の建造に適しています。瀬戸内海は山がちな地形に加え、年降水量が少ない気候のため、屋外での作業が多く溶接回数も多いことから造船業に適しています。

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現在日本における船舶解体瀬戸内海を中心に6社が行っています。そのほとんどが機械化されており、ドライドックまたは大型クレーンによる陸揚げの後、モビルシャーと呼ばれる鋼材切断アタッチメントをつけた重機によって船体の切断作業が行われています。

列車の墓場

海外:

引退した列車はどこへ行くのでしょうか?一部の鉄道は海外で第二の人生を送る事例もありますが、多くは各国内で解体され再資源化されます。そのため、飛行機や船のようにグーグルマップに映り込むほどの大規模な「墓場」というのはあまり聞きません。とはいえ、世界には様々な列車の処分方法・場所があるので見ていきたいと思います。

アメリカ

ニューヨークの地下鉄は廃車になる際、に乗せられて搬送されます。どこにいくのかというと、、、なんと海へポイッと捨てられてしまいます。産業廃棄物の不法投棄ではないのかと思われるかもしれませんが、もちろん理由があってのことです。

現在1000を越える車両が海に沈められていますが、そこが人工の漁礁となっています。餌の貝やエビなどが定着し、外敵から守ってくれる環境のため、魚の数は従来の400倍以上に増えたと報告されています。もちろん車両は、環境に悪影響を与える汚染物質などを全て取り除いたうえで行ってます。廃棄コストも削減でき、漁業活性化になるなんて素晴らしいアイデアですね。

インドネシア

日本の中古車両は、主に東南アジアの発展途上国で第2の人生で送る場合が多いです。なかでも、インドネシアへの輸出は盛んでジャカルタ首都園の通勤各線を運営するインドネシア通勤鉄道(KCI)が保有する中古車両は約1000両を越え、その稼働率は90%を越えています。

ジャカルタ東部にあるチカウム駅「インドネシアの列車の墓場」とも言える場所です。現在は休止駅となっていますが、ホームの横には160両以上の廃車車両が廃棄されており、日本からの譲渡車両も数多くあります。山積みされた廃車車両をグーグルマップからでも眺めることができます。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jalita_Cikaum.jpg

ボリビア

ボリビアと言えば、近年はウユニ塩湖で大いに盛り上がっています。そんなウユニ塩湖の近くに「セメントリア・デ・トレンス」(日本語:列車の墓場)と呼ばれる場所があります。

19世紀、鉱物はボリビアの主要産業として多く生産され、その輸送手段として鉄道網が整備されてていました。1879年にチリとの戦争で負け、太平洋へ抜ける領土を失ったボリビアは資源を運び出せなくなり、鉄道はそのまま百年以上放置されることとなりました。現在では風化が進み、この場所はウユニ塩湖ツアーのスタートポイントとして観光スポットになっています。

Jerzy Andrzej KuciaによるPixabayからの画像

日本:長野総合車両センター

日本にも「列車の墓場」と呼ばれる場所があります。現役を退いた鉄道車両を解体する総合車両センターと呼ばれる工場が全国にいくつかあり、その中でも長野総合車両センター「JR東日本の首都圏車両の墓場」とも呼ばれています。もともと、埼玉県の大宮で解体されていたのですが、そのスペースを鉄道博物館にしたため、大宮で解体ができなくなり長野で解体するようになりました。

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しかし、なぜそんな遠くまで移動させなければならないかというと、アスベスト含有可能性がある車両を解体できるところが郡山・秋田・長野にしかないためです。秋田は解体に非常に時間がかかり、郡山は車両を保管するスペースがありません。加えて、自走できる所が長野だけのため、長野総合車両センターが最大規模の解体所となっています。

同様に、JR西日本の列車の墓場として有名なのが、山口県にある「下関総合車両所(幡生車両所)」です。

宇宙機の墓場 

海外:ポイント・ネモ

最後に宇宙船や人工衛星などの宇宙機の墓場を見ていきましょう。これまでの墓地は陸地に合ったのに対し、今回はになります。場所は、ニュージーランドとチリのほぼ中間に位置する南太平洋のポイント・ネモです。ここは世界で最も陸から遠い場所(到達不能極)と呼ばれています。その距離最寄りの陸地から実に約2,690km!

© OpenStreetMap contributors https://www.openstreetmap.org/copyright 

人工衛星は半永久的に活動できるわけでなく、経年劣化して次世代機へと引き継がれていきます。そして、役目を終えた人工衛星はどんな最後を迎えるのかというと、大気圏へ突入させて燃やし尽くします。その際、8割は燃え尽きるのですが、残り2割は地球上にそのまま落ちてくることになります。

この人工衛星の落下地点こそがポイント・ネモであり、世界で最も落下被害が少ない場所と言えます。宇宙飛行士の間ではこのエリアを「スペースクラフト・セメタリー(宇宙機の墓場)」と呼ばれています。スペースクラフト・セメタリ―の広さはおよそ1万㎢で、このエリアには航路や空路は一切ありません。

では、周辺地域に対する環境問題生態系への影響はどうなっているのかというと、このエリアがあまりにも大陸から離れた場所にあるため、生物が生きるための栄養素が少なく、海洋生物も元々少ないと言われています。多様な生態系を築けていないこの環境は海洋砂漠とも表現されており、ポイント・ネモは生物多様性への被害を最低限に抑える点においても現状ベストな落下地点と言えます。

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