前回は滝を紹介したので、水繋がりで湖を紹介していきたいと思います!
カスピ海はユーラシア大陸の中央アジアと東ヨーロッパに間に位置する世界最大の湖です。
その広さは371,000㎡で、この広さは日本の国土総面積とほぼ同じです。
ヴォルガ川、ウラル川を含む大小130もの河川がこのカスピ海に流れ込んでいますが、
実は流出する河川は1つもありません。
全ての川のゴールがこのカスピ海になります。
加えて、はるか昔は海洋であったため、塩湖となっています。
この湖はあまりにも規格外のため、通常の湖とは全く異なる特徴を持っています。
湖にも関わらず名前に「海」がついています。実際、湖なのか海なのか気になるところです。
答えは、地理学上「湖」で合っています。しかし、国際協定によって「海」と定義されています。
実は、この湖海論争は2018年に進展があったばかりです。
カスピ海はロシア・カザフスタン・トルクメニスタン・イラン・アゼルバイジャンの5ヵ国に面しています。20年以上にわたってこの沿岸5各国で湖海論争が行われてきました。その構造とは
湖派 イラン vs 海派 その他4ヶ国
どうしてこのような構造になるのでしょうか?
そこには湖と海の明確な定義の違いがあるからです。
湖の場合 沿岸5ヶ国で資源を共同管理する
海の場合 国際法で資源は沿岸線の長さによって5分割される
元来、カスピ海はソ連とイランの2ヵ国が「湖」という位置づけで共同管理してきました。
その当時は仲良く半分に分け、トラブルも発生することもなく平和でした。
問題が複雑化したのは、ソ連崩壊に伴い残り3ヶ国が誕生してからになります。
ちょうどこのころからカスピ海に大量の石油と天然ガスが埋蔵されていることが発見されました。
しかも、この資源がアゼルバイジャンやトルクメニスタンなど新興3ヶ国の沿岸周辺で確認されたものだから、イランからすると全く面白くありません。
従来、ソ連と取り分を半分こしていたイランからすると、「海」と定義されると 沿岸線の長さが短くなります。
すると、これら資源の旨味をほとんど得ることができなくなってしまうため、反発を行ってきました。
揉めに揉めて20年間、2018年夏にこの論争が事実上「海」で決着がつきました。
その立役者(?)となったのは、ドナルド・トランプ元大統領です。
トランプ政権とイランの関係は非常に悪く、イランへの制裁が再開されたことで、イランは苦境に立たされます。
国際的孤立を回避し、国益を維持していくためにはロシアなどと関係を強化せざるを得ません。
そのため、2018年8月12日にカスピ海沿岸5ヶ国による首脳会議が開催され、
イランはカスピ海領有権を譲歩する代わりに、ロシアとの関係改善・強化を図ったという経緯になります。
しかし、これはイランーロシア間でロシアの主導権がより強くなった結果となるため、イランは対米関係だけでなく、対露関係においても非常に緊張感ある立場に立たされる結果となってしまいました。
誤解がないように申しあげると今回の首脳会議で、カスピ海が国際法上において「海」と適用されたわけではありません。
しかし、イランの譲歩により国際協定によって「海」という概念が取り込まれるようになったため、事実上「海」という表現で1歩前進したのです。
今回はこのあたりとさせていただきます。ご覧いただきありがとうございます。
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