首都とはその国においてシンボル的な存在の都市が多いかと思います。その多くが政治や経済の中心地で、外国に訪れたらまず訪れる場所でもありますよね。そんな首都の中でも、存在感がなくて観光客も少ないのに、とんでもなく立派な街並みの都市があります。
ミャンマーの首都ネピドーです。
我々がミャンマーを想像するときにまず思い浮かぶのはバガンやヤンゴンです。バガンは広大な原野に2000以上の寺院や仏塔が林立しており、世界遺産に登録されています。
ヤンゴンはミャンマー最大の都市で、2006年にネピドーに遷都されるまでは首都でもありました。経済や観光の中心地として発展をし続けており、人口規模は500万人を越えています。空路、陸路どれをとってもヤンゴンは国内屈指のハブ拠点となっています。東京からもヤンゴン行の飛行機は出ており、日本大使館も多国籍企業のオフィスもほとんどがヤンゴンにあります。
では、ネピドーはどんなところなのでしょう?2006年に遷都してできた新しい首都ネピドーは、ヤンゴンから北に約360kmの位置にあります。ほぼ直線の高速道路をすっ飛ばして約6時間、新たにゼロから造られた人工都市でもあります。
かなり急な移転だったようで、正確な理由は定かではありませんが、
①ミャンマー国土のほぼ真ん中に位置するため
②ヤンゴンに人口が密集しており、政府機関を拡張する余地がなかったため
③広大な土地を確保しやすいため
④内陸に位置するためヤンゴンよりアメリカの侵攻を受けにくいため
⑤占星術の命令 などいろいろな臆説が飛び交っています。
さて、前置きが長くなりましたが、ネピドーが世界一不気味な首都である理由をご紹介いたします。ネピドーは軍用地だった場所に新たに作られた人工都市のため、従来の都市とでき方が全く異なります。最初から決められたハコの中に、計画的に建物や道路を配置し、居住エリアも決めてしまいます。高級ホテルや大型ショッピングセンターなども建設され、観光客対策も行ったようです。
街を訪れて一番に驚くのは、ネピドー市内の道の大きさです。驚異の片側10車線で、最大20車線にもなります。ジェット機も離着陸できるようにしたとかそうでないとか。
これだけの道路を用意していながら車の往来はかなり少なく、全くないときも頻繁にあります。そのため、道の真ん中で写真を撮っているSNSをよく見ます。加えて、高級ホテルにも自分以外誰も泊まっておらず貸切状態なのではないかと思うときが度々あるようです。飲食店はかなり少なく、転勤させられた公務員の多くは自炊をせざるを得ない状態です。飛行機もヤンゴンに比べると種類も本数も極端に少なく、ヤンゴンで乗り換えてくる必要があります。
2011年に東京ドーム70個分に相当する大きさの国会議事堂ができましたが、行政エリアには一般人も立ち入り禁止のため、この広大な敷地に人が歩いている姿を見ることは多くありません。役人にとっても、観光客にとっても訪れるのに骨が折れるうえに、制限も多くそこまで観光資源は豊富ではありません。しかし、最近のネピドーは以前より観光に力を入れており、ウッパダサンティパコダという巨大な寺院を作ったり、日本食レストランなどもでき始めているようです。
つまり、ネピドーはとんでもなく広く豪華な街をつくったにも関わらず、そこを歩く人の姿は極端に少なく、非常に不気味な街並みとなっているのです。
学習ミャンマーから学ぶ地理学のおもしろさ
●エーヤワディー川の沖積平野で稲作が行われているが、工業化は遅れている
●最大都市はヤンゴンで、経済・観光の中心地
●2021年に軍部クーデーターにより、アウサンスー・チー国家顧問を拘束し、軍事政権に戻った
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